精液に関しては色々な情報がありますが、今回は医学的知見からの情報を紹介します。

現役の泌尿器科医の方に情報をいただきましたが、正直、僕自身もこの内容を3割程度しか理解できていませんが、たまにはこういった小難しいことを勉強するのも良いと思っています。


精液は精巣で作られる精子の他に、副生殖器である精巣上体、精管、精嚢、前立腺、尿道球腺などで作られる分泌液によって構成されています。

これらのうち、まず精嚢からの分泌液が、全体の60~70%を占めています。
そして、精液のpH(酸性度)を調節しているのは前立腺からの分泌液です。

また、精液の独特な白さを呈するのもこの前立腺からの分泌液によるものとされています。

さらに、粘性は精嚢、尿道球腺からの分泌液によるものです。
このように、各器官がそれぞれ分泌液を放出し、それが合わさることで複合的に精液は作られているのです。

分泌液とともに精液を構成している精子は精巣の中でも精細管という管の中にある精祖細胞という精子になる前の細胞から分化してできてきます。

精子形成の初期の段階では精巣内で行われていますが、その後、精巣上体という精巣に接している場所に移って精子は成熟し、射精されるまで保存されています。

大まかに精子ができる流れを記すと、

精祖細胞→一時精母細胞→二次精母細胞→精子細胞→精子

という流れで精子ができることが知られています。
この間に下垂体前葉から放出されるFSHやLHというホルモンが精子の形成を促進しています。

精祖細胞は有糸分裂を行い、2つの一次精母細胞となります。
次に減数分裂という少し特殊な分裂を行い、一次精母細胞は二次精母細胞となります。

二次精母細胞も同様に減数分裂を行って精子細胞となります。
精子細胞は成熟すると精子となります。
こうして、一つの精祖細胞から4つの精子が形成されています。

ちなみに、精巣が陰嚢として吊るされた形を取っているのは精子形成のプロセスや精子保存において、高温にさらされないようにするためです。
正常体温よりも高温になると悪影響を受けるので、正常体温よりも2℃程度低い温度を精巣は保っています

精液の構成成分

精液は、精漿と精子から構成されています。

精漿

精液を構成している液体成分のことを精漿と呼びます。
60~70%が精嚢からの分泌液で、その他は前立腺からのものが大部分ですが、尿道球腺や精巣上体からの分泌液も一部含まれています。

精嚢からの分泌液にはフルクトースという糖分が多く含まれており、これが自身で栄養を供給できない精子の栄養源となります。
前立腺からの分泌液にはクエン酸が多く含まれており、pHを精子が生存しやすい状態に維持しています。

精子

精巣で作られ、精巣上体で保存されていた精子が射精時に放出されます。

精液検査の所見・正常値

精液を検査する際には測定結果の数値は項目ごとに設けられた基準値と比較して評価されます。
また、基準値は精液の質とどれくらい授精に至ること可能性があるのかとの相互関係について研究をした結果を用いて算出されています。

精液検査の正常値を以下の表に示します。

項目 正常下限
精液量 1.5ml以上
pH 7.2以上
精子濃度 1500万/1ml
総精子数 3900万/1回の射精
前進運動率 32%以上
総運動率 40%以上
精子形態 4%以上
精子生存率 58%以上

(WHO・ラボマニュアル5版より引用)

上記の表に書いてある値の他にも、ペルオキシダーゼ陽性白血球や精液中亜鉛・グルコシダーゼなど様々な項目において精液の総合的な評価を行います。

肉眼的所見

射精直後の精液は白濁色をしていて、粘り気のある液体ですが10分程度時間が経過するとさらさらした透明の液体になります。
これは、射精直後に精液が女性器内にとどまるために粘性があり、多少時間が経った段階では精子が卵子に向かっていきやすくするためにさらさらになるのではないかと考えられています。

臭い

射精から時間が経つと独特のにおいを発するようになります。
栗の花の臭いとよく形容されます。

精液所見が異常となる疾患

乏精子症

精液1ccあたりの精子の数が基準下限を下回ったものを指します。
2010年のWHO分類を用いますと、1回の射精当たり精子が3900万未満の場合を乏精子症と呼びます。

また、精液中に精子は存在しているもののその濃度が薄く男性不妊の原因にもなります。

治療としては、薬物療法を行って精子の濃度を上げる場合があります。
精索静脈瘤という疾患が原因で乏精子症になっている場合は手術療法が中心です。

高度の乏精子症ではこれらを行っても自然妊娠の可能性が低いため顕微授精法と呼ばれる治療を行うことになります。

精子無力症

顕微鏡で精液を観察して、前進運動精子が基準の下限を下回ったものを指します。
2010年現在、全身運動率32%未満のものを精子無力症と呼んでいます。

治療としましては副性器に炎症を合併している場合は抗生剤などの薬物療法が中心となりますがそうでない場合は乏精子症の際にも行う顕微授精の対象となります。

無精子症

射精精液中に精子がない場合を無精子症と呼びます。
無精子症には2種類あり、精子の通り道が詰まってしまっている閉塞性無精子症と、精子を作る段階に問題がある非閉塞性無精子症があります。

閉塞性の無精子症であれば精路再建術という手術を行うことで自然妊娠を期待できます。

非閉塞性無精子症にたいしては治療が難しいのが現状です。
というのも少しでも受精可能な精子が体内で作られていれば顕微授精を考えることができますが無精子症では精子が精液中に全く見られないため、男性不妊の中で最も困難な症例の一つになっています。

死滅精子症

射精精液中に精子が存在しているものの、運動精子を認めない場合を死滅精子症と呼びます。
すべての精子が死滅してしまっている場合は顕微授精を行っても受精率がわずかですが受精さえしてしまえば妊娠・出産の可能性は期待できます。

実際に死滅精子症と診断された後、妊娠・出産に至ったケースもあり、死滅精子症を診断されても徹底的に運動精子を探すと見つかる場合もあります。

奇形精子症

精子の70%以上に形態異常を伴うものを奇形精子症と呼びます。正常な精子と比べると若干受精能力は落ちますが、形態の良い精子を選んで顕微授精することで十分受精させることが可能とされています。

Q.精液の出る量が多い人と少ない人がいる理由は?

精液の量が多い人と少ない人は、確かにいます。それについて明確な理由はわかりませんが、上で解説したように、精液所見の基準値においても、精液量、精子濃度、総精子数が別々に規定されている通り、まず精液量と精子濃度は分けて考えなければいけません。

精子自体は精巣から作られますが、精液の多くは精嚢や前立腺から分泌されます。
そのため、精液が少ないように思えても精子は少なくない場合はありますし、逆もまたしかりです。

医学の世界では、不妊という困った症状に対しては研究が行われますが、精液量自体が少なくても精子濃度が濃ければ妊娠は十分可能です。
そのため、精子数についての研究はあるものの、精液自体の量についてはあまり研究がないのです。

精液量自体については、身長が高い人と低い人がいるように、体質的なところが最も大きいでしょう。

まとめ

一言で精液といっても医学的知見だと、とても難しいことがわかりますね。

精液について覚えておいてほしいことは「精液=精子」ではない点と、精液の量よりも「精子の質が重要」だと言うことです。

いくつか医師の方に質問をしてみたのが下記の内容です。

Q.精液の溜め過ぎは良くないのか?

精液をためると体によくないという根拠はありません。
実際に思春期に精通があってから自慰行為をしない男性がそれによって病気になるというわけではありません。

また、高齢男性で性活動を全く行わなくなる方もいますが、そうした場合にも特段体に悪いことはありません。
「健全な男子たるもの性的な活動をすべし」という考え方から、精液を出さないのは不健全だとする発想かと思われます。

Q.30歳以降の男性が精液の量を増やすための方法は?(亜鉛は精液量を増やすか?)

精子の質を改善するという意味合いではいくつかの化学物質についての研究があります。
多いものとしては、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンB12、亜鉛、葉酸、コエンザイムQ10、カルニチン、βカロテン、リコピンなどに関しては、精子の質を改善する可能性が報告されています。

精液量自体を増やすかどうかについてはわかりませんが、精巣や精液をつくる臓器内の環境を改善することで精子の質を改善していると考えられるので、何らかの理由によって精液が減ってしまっている人においては、精液量を増加させる可能性は考えられます。

また、精液を産生する前立腺は、男性ホルモン(テストステロン、ジヒドロテストステロン)に依存性の高い臓器です。
前立腺疾患の研究の中で、血中の男性ホルモン値が下がると前立腺が縮小することが知られていますので、ある程度の男性ホルモンが分泌されていないと、前立腺が萎縮し、精液量が減少する可能性があります。

ただし、男性ホルモン投与することで通常より多くしたからといって精液量が増えるというわけではありません。
むしろ、外からむやみに投与することで、生理的な分泌が起こらなくなってしまうため、逆効果になってしまうことがあります。

男性ホルモンの値を保ちたいならば、活力のある生活をすることが大切です。
仕事を精力的にこなすことや、脂肪をおとして筋力をつけること、女性とデートをすることなどが有効と考えられます。

また、精子の質についての研究においては、精巣内の活性酸素がよく注目されています。
血流の悪化や、化学物質などによって活性酸素が発生しやすくなると、精子の質が低下することが知られています。

たとえば精索静脈瘤といった、精巣から体の中心に血液が戻ってくる静脈が変形してこぶのようになってしまう病気では、血流がうっ滞するために活性酸素が増加します。
これに対して手術を行うことで、活性酸素が減少し、精子の質が改善するという報告が多数あります。

こうしたことから考えると、活性酸素を減らすために、動脈硬化を防ぐことや、食生活を節制して余計な負担をかけないようにすることが大切でしょう。